「ん…………」

カーテンの隙間から零れる陽光。

瞼を閉じていても分かるその光に誘われるように香穂子は目を醒ました。

時計を見れば十時を回ったところ。

昨日寝たのが今日になるかどうかの時間だったのを思い出して口の中で寝すぎた、と呟きながらもその時間に満足して起き上がった。

きちんと覚醒すると小鳥の鳴き声が囀りが聞こえる。

少し前までならセレクションで弾く曲の練習の為にすぐに着替えてご飯を食べて、ヴァイオリンケース片手に出かけるのだが、そのコンクールも先日終わってしまった。

(ほんと不思議だったな……)

今はもう見えない妖精が、リリが、学校で自分が演奏すれば近くで聞いて、弾き終われば拍手を送ってくれている気がすると言えば、参加者の彼らや当の妖精は何と言うだろうか。

後者は、もう叶わないけれど。

胸で小さく痛む寂寞を振り払うように香穂子はカーテンを開けた。

「良い天気ー……」

雲ひとつ無い空、とは言えないが、遠くで見える雲の白さが昼に向かう空の蒼さと相俟って爽快だ。

(どうしようか……)

正直、何も無い今日ををどう過ごすか昨日から少し持て余していた。

コンクールが終わってからも休みはあったが、それなりに予定は埋まっていた。

冬海も天羽もそれぞれ予定があると言っていた気がする。

彼女らのどちらか、或いは両方を誘って買い物も出来ない。

家にいるか出かけるかだが、どちらもそれなりに、は楽しめる。

時計を見れば起きたときから三十分経とうとしている。

そろそろ決めなければ、このままずるずると今日を過ごすことになる。








公園へ

駅前通りへ

家にいる